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マニュアル形式はお笑い本のセールス救世主かも?(3)

(前話はこちら)
教義を作ろう
 教祖を目指すあなたが最初になすぺきこと。それは教義の作成です。
 と言うと、あなたはすぐに、「オレ、文章へタクソだけど教義なんて作れんのかなあ。やっぱり教祖って難しいや」と思うかもしれませんが、心配はいりません。文章に自信がなければ、最初は頭の中で作っておいて、その都度、口頭で弟子に指示するだけでも全然構わないのです。放っといても後で弟子たちが巧いこと成文化してくれます。仏教もキリスト教もそうやってきたのですから安心して下さい。

 なお、あなたがある程度教祖として大成した後は、ふらふらしたり、適当なことを言ったりするだけでも、それが教義となるので大丈夫です。あなたの行為に隠された深い真意は弟子たちが一生懸命考えてくれます。そうなればあなたは自然体で生きていくだけで良いのですから楽ちんですね。釈迦もお腹が痛くて寝てるだけで、その姿が大仏になったくらいです。また、あなたの言ってることが前後で少々食い違っていても気にしないで下さい。これも弟子たちが適当にアレンジして辻凄を合わせてくれます。
 ですから、少しくらいのミスは気にせず、勇気を出して初めの一歩を踏み出して下さい。最初から完壁にできる教祖なんていません。ゆっくりでいいのです。
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 神がいるとどんな良いことがあるのでしょう?一つ例を挙げるならば、「うまくいかなかった時に神のせいにできる」というのがあります。
たとえば、現代日本には「努力すれば夢はきっと叶う」という風潮がありますよね。しかし、あれは現代日本人の勘違いです。努力したってダメな時はダメです。現実主義者のマキャベリだって「必要なのは力と運だ」と言ってます。現実はそんなもんです。
 努力したってダメな時はダメ。では、そういった理不尽にぶつかった時はどうすれば良いのでしょう?
 そう、ここで神です。もし、あなたが全知全能の神を信じていれば、「まあ、これも神の思し召しだろう」と神のせいにできるのです。誤解している人も多いと思いますが、神は別に努力した人すべての夢を叶える必要なんてありません。良い結果など出なくてもー向に構わないのです。ただ、信者が「神は絶対間違えない。必ず正しいことをする」と本気で信じてさえいれば、どんな結果が出たとしても「これが神の意志なら間違いない」と肯定的に受け入れられるのです。神の役割はむしろここにあります。神は困っていれば助けてくれる便利なお助けキャラではなく、困っていること自体を肯定する存在だと言えるのです。

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なにが「ゆっくりでいいのです」なんだか。
ところで文中、なぜ急にマキャベリ?と違和感を持ち後日調べたところ、同著者でマキャベリ解説本をかつて上梓されておられるそうです。

このあと本書は、新興宗教興立にあたり必要な教義や教団運営など、さまざまなノウハウを案内しはじめます。
その編纂構成は英米ユーモア系ハウツーもの本とほぼ同様フォーマットです。だが日本語圏においては英米語圏ほどハウツーネタ本フォーマットは確立しておらず、残念ながら書籍構成上の不備・不足は否めません。
この傾向は本書内後半に進むほど顕著です。次第にばかばかしさをエスカレートさせる英米系ハウツー・フォーマットに比し若干の失速感はあります。

エスカレーションの一例として、たとえば先の『The Gospel of the Flying Spaghetti Monster』ならば「あらゆるドグマを拒絶することを教義とする」と称した手前、論述(?)後半には
    スパゲッティ・モンスター神が存在しないという明確な証拠さえ提示されれば
    スパゲッティ・モンスター神が存在しないことを否定しない
などとストリッパー工場やビール火山描写の悪ノリとともに、論理破綻のおかしさが出てきます。論理構造都合で、冒頭定義のご本尊否定を自らしてどうする(笑)。おまえは龍樹か。
英米系ジョーク本は1冊内のネタ本構成フォーマットや伏線回収のお約束ごとが割に整っているようで、かなりのクズネタ本でも、それなりに後半へ誘導します。

かたや邦訳に目を向けますと、ラッセル・ベイカーやマイク・ロイコ級の短編集であっても、中盤以降飽みがちな編纂が見られます。察するに編者のネタ本セオリー情報収集力や一冊のネタ本構成への助言あたりで、まだまだ改善余地をとりこぼしている気がいたします。
本書へ「後半の教団運営のあたりから、あんまりおもしろくなかった」の類の感想がオンライン上に散見するのも、おそらく同じ事由です。構成フォーマットがまだまだこなれずグズつく日本語圏お笑いネタ本フォーマット不備に起因する処が大きいのでしょう。加えて新書ならではの文字数制約都合もありましょう。
後半も個々気の利いたくすぐりもかなりあり、ネタの散りばめぶりには、もったいなさすら感じます。

などと御託つべこべ申しておりますが。
日本語圏においてこのクラスのいんちきハウツー本が刊行され、そこそこのセールスをとれるケースもあるようです。お笑いテキスト好きにとり、歓迎すべき潮流だと思います。

またオンライン上の感想文では「調べかたが浅薄だ。説得力がない」の類も、割と散見しました。おそらく本書『完全教祖マニュアル』へ求める内容がワタクシのようなネタ本要素でないかたと、お察しします。
そのようなかたは本書よりも橋爪大三郎や寺社経営経理本、あるいは
   『このディベートで邪教を論破!』
   『こうすればあなたのお説法に信者はうなずく!----ビギナー僧侶入門』
の実用書類を、むしろご精読すべきかと存じます。(つづく)
  
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