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マニュアル形式はお笑い本のセールス救世主かも?(1)

ここ数年の宗教ネタ読み物においては、ボビー・ヘンダーソン『The Gospel of the Flying Spaghetti Monster』が出色の出来であることに、異論は少ないでしょう。
当時、流行に乗り邦訳も出たらしいです。
しかしインテリジェント・デザインの思いつき臭ぷんぷん漂う理屈が、そもそもの騒ぎになっていない日本。
スパゲティ・モンスター教のロジックのばかばかしさが、面白がられるはずもありません。
案の定、居酒屋コンパノリの馬鹿騒ぎで「ラーメン」「ラーメン」を連呼し、やがて間もなくすたれました。ばーか、ばーか。

ムーブメントとしての悪ふざけはさておいても、『The Gospel of the Flying Spaghetti Monster』は学術研究発表の編纂体裁を採った点が、とてもおかし味を増幅しています。
文体・論調はあくまで一般向け学術書、だがその論旨もネーミングもただのダジャレ。
『The Gospel of the Flying Spaghetti Monster』を読んだとき、最初に思い出したのは、東大出版会『知の技法』でした。掲載内容はまるで異なりますが、一般向け学術概要紹介時の編集作法がよく似通っていたからでしょう。
かたやこのテのそれらしい宗教理屈をでっちあげ茶化す手法は、日本ではウケが悪く難しいだろうなあ、と思ったものでした。

と、その矢先。
少し異なる切り口での宗教ネタ本が、日本でも刊行されていました。

書名は『完全教祖マニュアル』。2009年刊行。
このサイトのように、本文抜書きをし、さも自分で書評紹介したようなつもりの図々しいネットユーザーへ向け、本書は巻末にわざわざ紹介文をご用意いただいています。これらを用意する態度から察しても、この本が市況・世事を茶化す気、満々です。
では著者の配慮へ深謝しつつ、遠慮なく引用させていただきますと――

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本書の読者から続々と感謝のお手紙が届いております!

「人生が一変した!」  一之瀬謹和さん (25歳)
 私が「教祖マニュアル」を読んだのは22歳の時でした。当時、大学四年生だった私は就職活動に敗れ、来年度からの無職生活を思って途方に暮れる日々を送っていましたが、そんな私を心配してか、母が本書を手渡してくれたのです。最初は「面倒くさいなあ」「教祖になんかなれるわけないじゃん」と思っていた私ですが、本書を読み進めていくうちに、「こんな簡単に教祖になれるのか」「これなら私でもできるかもしれない」と思うようになり、大学卒業と同時に一念発起し、辻説法から始めてみたところ、わずか一年の間に信者数万人、年収2000万円の勝ち組教祖になることができました。本書の教えにそのまま従っていただけなのに、こんな簡単に大成功できるなんてビックリです!母もとても喜んでくれています。
 また、これまで私は女性からゴミムシを見るような目で見られていましたが、今では多数の女性信者に崇められ、かしずかれる毎日です。初めて恋人もできましたし、童貞も卒業できました。信者たちから毎日感謝の手紙が送られてきて、とても幸せな日々を過ごしています。こんなことなら、もっと早くから教祖になれば良かった、と後悔することしきりです。
あと、母の勧め通り、本書を10冊買って神棚に飾っておいたら、その月のうちに信者数が倍になったことがありました。本当に霊験あらたかな本だと思います。
それと、ペットの猫の癌も治りました。
本書の著者二人には感謝してもしきれません。私の人生を変えてくれて本当にありがとう!


「わずか1ヶ月で信者が3倍に!」 前田雄亮さん(52歳)
「えーっ、こんな旨い話があるわけないじゃないか!」。それが本書を手に取った時の私の第一声でした。私は10年前に教祖になったものの、鳴かず飛ばずの売れない三流教祖で、昨今はとみに信者数も減退し、本気で引退も考えていました。そんな私が書店でたまたま手に取ったのが『完全教祖マニュアル』。本書に書かれている事柄は理に適っているように見えましたが、しかし、現役の教祖として活動してきた私には、「こんな簡単なことで巧くいくのかなあ」と半信半疑の気持ちが拭えませんでした。
 それがどうでしょう! 本書の教えの通りに実践してみたところ、目に見えて信者数が増えていくではありませんか! ピーク時には1ヶ月の間に信者数が3倍になったことさえあるのです! まるで奇跡か魔法を見ているようで本当にビックリしました。同業者の教祖仲間たちも、「一体どうやったんだ?」と興味津々で聞いてくるので、最近では黙って本書を差し出すことにしています。
 振り返ってみると、かつての私は教祖として信者たちに何をしてやれるかなど考えず、ただ闇雲に大地震予言ばかりを繰り返していました。こんな自己満足教祖では、信者が集まらないのも道理だったと思います。多くの人たちは、かつての私のように自己流で教祖をやっていると思いますが、自己流ではそのうち限界が来るはずです。有名教祖の成功例も、たまたま時代にマッチしただけに過ぎず、参考にはなりません。ですが、本書は極めて科学的なマニュアルであり、普遍の真理であるので安心して従うことができるのです。
私は今からでも自分の教理を、本書に準じたものに作り替えようかと真剣に考えている程です。昔作った教理を見直していると、自己満足に過ぎなかったかつての自分が恥ずかしくなってきます。今では信者の皆さんの幸せそうな笑顔を見るのが毎日の楽しみです。
『教祖マニュアル』は本当に素晴らしい本だと思います。


「神の意志を正しく伝えられた」 脇雄太郎さん(33歳)
 私が神の啓示を受けたのは27歳の時でした。神から直接この世界のあり方に対する正しい知識を授けられた私は、当然それを伝えるぺく人々に語りかけていったのですが、結果は惨憺たるものでした。3年後に起こる地球崩壊の脅威を私が熱烈に語っても、多くの人は私を無視し、ある者は石を投げ、通報しました。当然、私は人々を恨みましたが、しかし、今にして思えば、問題は人々にではなく、神の意志を効果的に伝えられない私自身にあったのです。
本書に出会うまでの私は、本当に行き当たりばったりな教祖だったと思います。迫害にあってはくじけ、試練にあってほ挫折し、論争には負け、失うばかりの日々……。こんなことなら、神の声なんて聞けなければよかったのにと思うことさえありました。神はなぜこんな無力な私に使命を授けたのか。私には荷が勝ちすぎているのではないか。神を呪う日々でした。
 そんな折、出会ったのが本書です。本書の科学的メソッドの数々は、私にはなかったテクニカルな補強をもたらしてくれました。その後の私の成功については新聞などをご覧になればわかりますから省略いたしますが、あのとき、本書がなければ、私は神を裏切っていたかもしれません。本書は私ばかりでなく、私が救い、そして私がこれから救うたくさんの人たちをも救ってくれたのです! ありがとう教祖マニュアル!

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いかがわしい。
じつにキナ臭ささがぷんぷん漂ってまいります。
ダイエット商品や副業ビジネスの宣伝テキストをそのままに、「新興宗教」へテクニカル・タームを差し替えただけのこの紹介文からも、眉ツバ感が推し量られるというもの。25歳でも33歳でも52歳でもまるで文章表現に差のない作為的な感じも、さもありなん。

ところでこの『完全教祖マニュアル』、ネタ本体裁ながら、笑いを誘うためのクスグリへは、とくに配慮されていません。斜に構え
 「だいたいこんな感じだよな?、な?
  ライフハックとかぬかし、周りのヤツらを出し抜こうと小ざかしく振舞うお前らには
  この程度でも面白いだろ?」
な姿勢が見え隠れします。当世の日本語文化圏ではクレームの出にくい無難なアプローチでは、あります。(つづく)
  
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記事末に初出年月日を記載しています。初出の場合には無記載です。
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