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ネタが書ければどこへでも(2)

(前話はこちら)
■正しくピアノ・リサイタルを聴くには
ピアノやヴァイオリンのリサイタルでも先の作法をおすすめします。が、もうひとこと。
「ええ、たしかに彼女はテクニックがあるわ。
 でも、それは自動ピアノにもいえることじゃない?」
などという感想をつけ足すとなおよろしい。そして、“ソウル(魂)”という言葉を――飲み込みの悪いウエイトレスに何度も注文をクドクド繰り返すように、深い感情をこめ――あちこちへ効果的に差しはさみましょう。

この種のリサイタルでの曲目は、交響楽のコンサートより複雑なものが多いものですが、むしろその点がつけ目です。なぜなら、複雑ゆえに演奏がまだ終わっていないうちに拍手をするあわて者が必ず出ます。誰かがこういうへまをしでかしたとき、近くにいる人たちとニヤニヤ微笑をかわしあう満足――これに匹敵するのは、演奏の本当の終了と同時に拍手の一番乗りをする喜びぐらいです。けれどもこの芸当は初心者にとってたいへん危険で、誤爆度がきわめて高いといわねばなりません。
そこで時ならぬときに拍手を贈る過ちを絶対確実に避けるため、いっそ賞賛をまったくやめてしまうのが、安全かつ賢明です。これは大多数の批評家の慣用手段でもあり、あなたにも心からおすすめできます。

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このテキストののち、ほどなく『ハドック夫妻シリーズ(邦訳アリ)』が大当たり、ドナルドはまずユーモリスト作家として名を挙げます。
ハリウッドより脚本家としてお声がかかり、活躍の場をブロードウェイからハリウッドへ。同じ頃、ロバート・ベンチリーやドロシー・パーカーもハリウッドのコメディ・ブレーンとして東海岸から西海岸へ。49'erから遅れること、約90年。ニューヨークにとっては痛い頭脳流出――とは、別に誰も思わなかったようで‥‥。


ロバート・ベンチリーが役者としても活躍したのとは対照的に、ネタ作りのスタッフ側としての力量を買われ『素晴しき休日』『邂逅』『運命の競宴』、そして『フィラデルフィア物語』などブラッシュ・アップされたネタをわれわれに残してくれます。今見るとスローペースぶりに退屈なトコもありますけどね。
その頃波に乗っていた彼らの様子は後年の楽屋ウケ映画『Robert Benchly and night of the Algonquin』――この映画自体は大して面白くはないと私は思います、史的価値に関心のあるかたは、よろしければどうぞ。『Mrs.Parker and the vicious circle』ほどハデな脚色はないので、まあ史料的な価値は幾分あるかなあ――などで多少伺い知ることができます。


『Robert Benchly and night of the Algonquin』『Mrs.Parker and the vicious circle』が出たので、筆のすべりついでに言わせていただくと、アメリカの過去のコメディアン・トリビュート作品は、なぜ揃いも揃ってあんなにコメディアンをヒューマニティあふれるキャラにしたがるか?
『Man on the Moon』なんて、あれじゃ、アンディ・カウフマンが先に進み過ぎ客がついて来れなかったみたいじゃないか。
70's SNLが笑いのデフォルトであるワタクシからすると、80年代のアンディ・カウフマンは実際てんで面白くなかったんであります。ジム・キャリーの好演が勿体ないですよ、あれは。
人を笑わせることを生業とした人間が、そんなにヒューマニスティクなわけがない。人としてどこか歪んでなきゃ笑いネタなんかが搾りだせやしない。それができたから辛うじて社会適応したのになあ。



ドナルド・オグデン・ステュアートへ話を戻します。
ハリウッドでの大当たりのあと、ドナルドは赤狩りに引っ掛かかってしまいます。それまで禁酒法もヘイズコードもスラスラかわしネタ書きを続けたドナルドでしたが、今度はジョークが通じなかったようです。その狂騒ぶりにアホらしうなったか、早々にハリウッドからロンドンへ。
ロンドン時代は『フィラデルフィア物語』のイメージが強かったのでしょうか、映画・テレビの脚本でもラブロマンスものばかりが残っており、あまり大振りなネタを残してくれていません。
が、『Full Cast and Crew for Love and Death』で久しぶりにウディ・アレンのコメディ・ブレーンとして参画。ネタ作家としてはこれが遺作となります。


「ネタ書きで飯が食えればどこでもいいじゃん」 ドナルド・オグデン・ステュアートの魅力はそんな節操のなさというか身軽さだと思います。洒落てりゃいいのだよ、どこであろうと。
2005.07.24初出
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