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おすすめ・らもスターターキット

バカバカしいことを考え続ける、というのも、これはこれでなかなかの苦行ではないかと思います。少なくともバカでは持続できない。それなりに精進なり切磋琢磨なりセンスなりが要る。
先般階段から転げ落ちおっ死ぬ、という誠に“その方らしい”死にかたをなされた中島らもさんは、バカバカしいことをずっと吐き出し続けてこられたかたのおひとりでしょう。
中島らも。
元々その名を馳せたのは広告業者として。それもサントリーとか資生堂とかキャノンなどの洗練イメージCM常連企業ではなく、カネテツという地場の練り物食品メーカーのコマーシャル・プランというのも、まことにそれらしくてよろしい。コマーシャル名は
  啓蒙かまぼこ新聞
かまぼこやちくわに、啓蒙だ新聞だと大上段な修辞をつける言語センスも相当なモンですが、それを自社CMとしてGoサインを出すかねてつ食品という会社の柔軟具合も大変よろしい、さすが練り物メーカー。

しょうもない地口ネタでマクラのついたところで、今更ながら中島らもの紹介です。
エッセイ、小説、人生相談の回答などなどあまたネタを残し夭折されましたが、らもビギナーのかたへのスターター・キットとしては、ワタクシは『らも咄』をオススメします。
 ・「書かれた落語」を意識した筆芸であること
 ・標準的日本語圏内通じる範囲内で「できる限り関西弁風を残す」ことに腐心している点
が大変高ポイントな作品群です。




さて、ここに登場しますのは大阪にある“大の字部屋”といういたって小さな相撲部屋なんで。大の字親方とおカミさん、力士は鳥柄山というふんどしかつぎ1人いるだけという、夜逃げ寸前の部屋でございます。

鳥柄 おカミさん。
おカミ なんや、鳥柄。
烏柄 けいこ上がったんで、チャンコにしたいんスが。
おカミ ああ、できてるで。ちょうどぐつぐつ煮えかかったとこや。たんとお上がり。
鳥柄 ごっつあんです。‥‥???おカミさん。
おカミ なんや。
鳥柄 鍋ん中にミソ汁がぐらぐら煮えとるんですが。
おカミ そうよ。今日はミソチャンコ。
鳥柄 これにいれる具のほうは。
おカミ え?“具”‥‥て?
鳥柄 いわしのつみれとか鶏肉とか、アブラゲ、ゴボウ、ニンジン、白菜、モチにウドン。どんと張り込んだところでアラのぶつ切り。
おカミ ああ、テレビで見たことあるわ。アラて、おっきなお魚やねえ、九州の。
烏柄 いや、アラはいいんすが、このミソチャンコの具は。
おカミ これやから田舎の子はいやなんやわ。ええ具合におダシとってあるんよ、それに肉とか野菜とか入れたら、おつゆの味がこわれるやないの。まあええわ、そこまで言うんやったら、今日八百屋さんでもろてきたキャベツの外側の葉っぱ。段ボールふたつほどあるからこれでも入れなはれ。どさどさっ。
鳥柄 ああっ、そんなやけくそみたいに入れんでも。
おカミ 文句言うんやない。チャンコもこれからはヘルシー指向でないとあかんのやわ。ベジタブル・ミソチャンコで持久力のあるスタミナづくりを目指すんや。そういえば、あんたこのごろぐっとスマートになってきたやないの。
鳥柄 (キャベツを喰いながら)ヘ。この部屋にはいって20kgやせました。
おカミ ええことやないの。これからは、力士もソップ型の時代よ。
鳥柄 ごっつあんす。出げいこに行ってると、股割りしてても、なんか頭がふらふらして。
おカミ ええやないの、麻薬もやらんとトリップできて。
鳥柄 申し合いでけいこしても、中学あがりの子に張り手一発でぽんぽん飛ばされる。
おカミ ♪飛んで飛んで飛んで~
鳥柄 化石みたいな昔の歌、うたわんとってください。ん?‥‥お‥‥イカがはいってる。やったあ。
おカミ それは私が、キャベツの芯のとこをイカに見えるように切っといたんやわ。ほほほ。
鳥柄 つまらんことせんといてください。
おカミ ほんのちょっとした思いやり。
(「うし相撲」より抜粋)




『らも咄』にはこんなバカバカしい「書きことばの落語」がたくさん掲載されています。
もうひとつ、ワタクシが“ようこんなあほなホラ話作りよったな”と笑いながら感心した「耳かき始末」の一部をご紹介します。たまった耳垢に困る男の話です。



男 しかし、あれやな、もののついでに訊いてみたけど、駅長室にも耳かきっちゅうのは置いてないんやな。民営化するやったらするで、それくらいのサービス考えとかんかいっ!さ。この梅田から一本道なんや、社長のとこは。タクシー拾う距離でなし、地下鉄乗る間合いでなし。がんばって、ここはひとつ歩こかい。‥‥ん?えらい道路工事しとるな。
   (ドリルの音。ドルルルルルッ ドルルルルルッ)
男 あ、ああ~~っ、それ‥‥きつい~。
   (ドルルルルルッ ドルルルルルッ)
男 あ、ああ‥‥っ!
工夫 おいおい、なんや、変なんがおるで。もし、そこの人、どないしはったんや。
男 ああ~。ドリル堪忍してえ~。
工夫 ちょっと、誰か医者呼んでこい‥‥おっかしなこと言うてるで。どないしましたんや、あんた。
男 いや、私、実は耳垢が詰まってどうもならんところへさして、おたくのドルルルーッちゅうのがきたもんやさかい。もう、もう三半規管と耳垢がごっちゃになって、立ってられへん。なんとかそのドリル、一時中断というわけには。
工夫 難儀な人やな。そら、わしは止めんこともないが。(ドルルルルルー)
男 ああ~っ。
工夫 あんた、どこまで行きまんのや。
男 ヘ。梅新東まで。
工夫 あちゃ~。こっから梅新東まで、きっちりドリルで掘り返してるんやで。
男 そんな、無態な‥‥。商売先に行けまへんがな。
工夫 ま、気い取り直して、耳かき横丁でもいくこっちゃな。
男 なんでござります?
工夫 耳かき横丁やがな。そこの紀伊國屋の奥の路地を、ちょちょいと曲がったとこやがな。
男 そんなもんがあるんですか。
工夫 ああ。わしら、商売柄、耳がかゆなったら、よう掻いてもろうとる。
男 そらええこと聞いた。(歩いて)ええと、このあたりかいな。なんや、まっ暗な路地やな。暗い中にぽうっと灯りが。なるほど「耳かきます」と看板が出とるがな。それも何軒も何軒も。気いつかんかったなあ。こんな極楽みたいなとこがあるやなんて。ま、ちょっとひやかしていったろかい。
男A (太い声で)お~ら、大将、耳かいていかんかね。
男 あ‥‥。こういうのはあかんのやな。だいたい耳かきっちゅうのは、好いた女の膝まくらでしんねりやるもんやないか。ああいうデリカシーのないのはあきまへん。
女 ちょっとお兄さん、寄ってってえ、今やったら、おへそのゴマ取りサービス付きよお。
男 ん?ヘソのゴマ取り?ぐらぐらっ!ぐらぐらっと心が揺れたが、ああいうのは邪道に決まっとる。本業がつたないからヘソに目がいくんや。‥‥お。その点、この店は風情あるやないか。暗い行灯に一言、“耳かき”。これや。これを求めとったんや。ちょっとごめんやで。
店主 へえい。
男 耳かいてもらえますか。
店主 ‥‥ヘ?
男 いや。耳、かいてもらえますか。
店主 お客さん。犬や猫でも自分の耳くらい自分で掻きまっせ。耳の裏くらい、自分で掻きなはれ。
男 いや、そういうことではなくてですね。耳の中の耳垢をですね。
店主 ならば、なんで最初から、“いっちょうへじってくれ”とそういわん。
男 “ヘじってくれ”‥‥て、どこの言葉ですか。
店主 お客さん、私の出生の秘密をさぐろうと。
男 いやいや、そんなことはないんですが。
店主 なら黙って耳をば出しなさい。‥‥ん?おお‥‥これは。あんた、えらいっ!よくぞここまで。青ノ洞門!
男 なんのこっちや。
店主 私はこういう客を待っとったんですよ。こういう客をばへじりたいと思って、この45年、店を開いとったのだ。
男 そんな昔から。
店主 なに、耳かき屋なんちゅうものは、戦前戦後、いっぱいおったのですよ。おもに中国人がやっとったがね。アメリカ文化がはいってくるにつれて、ああいうサービス業は姿を消したね。
男 そうですか。
店主 ジョンソン大統領がいかんかったな。
男 へ?
店主 ジョンソン綿棒‥‥なんてことをね。ふふ。
男 はい。
店主 よしっ、シラけたところで耳そうじだ。あんた、顔見りゃわかるが、湿潤型耳クソの持ち主だね。
男 あ、そんなことまで。
店主 ええい、みなまで言うな。耳をへじって45年。今日は久しぶりにあんたみたいなみごとな耳くそに出会った。ちともったいないが、あれを使ってみよう。
男 あれって?
店主 ミヤモトムサシが削ったという耳かきだ。
男 ‥‥嘘くさ。
店主 厳流島決闘の際、ムサシはついつい興奮して自分の櫂の先を削り過ぎたのだな。それでできたのが、このムサシの耳かき。
男 ほんとかね。
店主 さっ、ワイルドにいくぞ。グリグリッグリグリッ。
男 あ‥‥あ~~!
店主 グリグリッ、グリグリッ。
男 あ‥‥あ~~!
店主 カリクリカリクリ。
男 ああ‥‥あ。
店主 カリクリカリクリ。
男 あ‥‥あ‥‥
店主 さ、終わった。800円だよ。
男 800円とは言わず。
店主 何じやい。
男 一生おそばにおいとくれ~。
店主 やかまっしやい!
(「耳かき始末」 引用はいずれも『らも噺(2)』 角川書店 平成5年5月刊より。適宜改行。)
(ここまで2005.09.02初出)



2005/09/04 20:50 投稿者:週刊魚魚
らも耳かきというとマッチ棒で耳かきをしたために耳ガンになって死ぬ
町田康(当時町蔵)の話を思い出します。
この話が収録された本はスターターにはむきません。


2005/09/04 21:12 投稿者:Donald Mac
「むきません」って、あーた、のっけから否定型かいな‥‥。
どんなアホでも一ケ所ぐらい笑えるやろ、という意味では、らもビギナーには最適やと思うんやけどなあ、おっちゃんは。どや?(東京下町なまりの似非関西弁風に読むこと)


2005/09/05 20:45 投稿者:週刊魚魚
あ、むかないのは「らも咄」ではなくて
「頭の中がカユいんだ」というわけでした。
好きですが。


2005/09/05 02:11 投稿者:てる
寝ずの番、とかもスターターにはダメですかねー。
後は明るい悩み相談室。

私のスターターは、白いメリーさんでしたが、ダメを押されたのは悩み相談室でした。
あふん。


2005/09/07 00:45 投稿者:コピ
僕のスターターキットは「明るい悩み相談」でした。

ところで、「寝ずの番」はお読みになりましたか?
そこには、言葉というものの不思議さというか、言霊というものが本当にあるのだ…ということを実感させられる一文が、あるのです。


2005/09/08 01:56 投稿者:Donald Mac
みなさんのお声は『寝ずの番』が評判よいようですね。
昔読んだんですが、あまり笑った記憶がありません。これを機会に、再読してみることにします。

中島らもさんは本の表題のつけかたが実に絶妙で、よく関心させられることしきりです。
『頭の中がカユいんだ』「ガダラの豚』etc.. さすがコピーライターとしてデビューしただけのことはありますね。

なぜ『らも噺』よりも『悩み相談室シリーズ』や『寝ずの番』のうほうが優れているとお感じになったのか、そのあたりの理由や文奨励をご提示いただくと、より一層いただいいたコメントの説得力が増すと思います。
よろしければレスをご投稿いただければ幸甚です。>各位


2005/09/09 15:12 投稿者:詰めにくい
文章もいいんですが,私はテレビやラジオでしゃべる中島らもの方が好きでした。団菊翁みたいなことを言うと,84年から数年やっていたFM大阪の「中島らもの月光通信」(この番組でやってたコントは『ぷるぷるぴぃぷる』という本に入っています)は面白かったなあ。あの引きしゃべりでぼそっと面白いことを言うのが最高でした。書かれた文章だと親切すぎるというか,冗長というか,あの,ぽんと放り出すしゃべりの良さが失われているように感じます。
著書で一番好きなのは,これまた古い「なにわのアホぢから」です。当時は中島らも名でなく「関西人撲滅協会編」となってました。世にはびこる大阪本(まあ他人のことは言えないわけですが)の大半を支配する「おもろくて反骨精神で人情があつい大阪がなにがなんでも最高なんや」的な見方と一線を画した,というかそういう態度そのものをおちょくる視点に大いに共感したものです。


2005/09/11 02:15 投稿者:Donald Mac
詰めにくいさん相手に今さらですが、「話芸」の面白さをブログのような書きことばで伝えるのは、実に至難技です。そこでらもさんの面白い話芸について、敢えて「語りのおもしろさ」部分は削ぎ落とし、ご紹介しました。
おっしゃるように、らもさんの文章芸は「丁寧すぎる」トコも多々あります。読者をバカにしてるんじゃないかと思うぐらい。
広告業界出身だけに「最大公約数に通じるよう配慮する」文章癖がついてしまっているのもしれませんね。

かつて読売テレビの夕刻に公開収録の番組(確か神戸のどこかの公開収録スペースではなかったかと覚えております。番組名失念。ご記憶のかた、ご教示を)でも、迷進行司会ぶりを披露されていたことをおぼえています。

余談ながら。
爾来、日本の笑芸は比較的「笑いドコロ」に対し、ガイダンスが親切な気がしますね。
私はベガスやNYに出かけたときはなるべくスタンダップ・コメディなどを巡るようにしています。USA版は、いわゆる「ボケどころ」だけを客に投げ出す芸風が主流です。
日本のように「はい、ここで笑うんですよ」とガイダンスしてくれる“ツッコミ”と役割はほとんど持ちません。簡
単に言えば「漫才」という話芸スタイルは、たいへん少ない。

スタンダップ・コメディアンは、ボケだけを聴衆へ投げ出し
 「さ、私のボケネタは提供いたしました。
  このネタをあなた自身でツッコミ入れ、笑いなさい」
というスタイルが大変多いです。ボードビリアン以来の「ピン芸人重視」の伝統かもしれませんね。

もうひとつ、御指摘の「大阪らしさ」を茶化すスタンスについてのご指摘です。
これは単純に「大阪」という街が、日本の1地方都市に堕したひとつの象徴だと思います。
旅行をあまりされない詰めにくいさんがご承知がどうか存じませんが、他地方都市現地へうかがいますと、いかに他の地方都市といかに違い「こんな観光名所がある」「こんな名産がある」「住人はこんな気質でこんな方言を使っている」などの情報を、うんざりするほど提供されます。
私にとりそれらのほとんどはすでに事前に旅行ガイドブックなり来訪経験者のアドバイスなどで周知なワケで、そんな内容なんぞ、今更再確認する必要はありません。

むしろそういう地方都市環境にありながら敢えて
「こういうヘンな商売をやって生計が成り立っているヘンな会社や店」であったり
「絶対ウケが悪いだろうと思われるのがだが、なぜかしらロングセラーの名産品」だったり、あるいは地方都市ならではの「ヘンな人物・ヘンな建造物」を見聞しに、わざわざ足を運ぶのです。

大阪という街を紹介するのは、ご紹介のように
 「おもろくて反骨精神で人情があつい大阪がなにがなんでも最高なんや」
を前提に、それにそぐわない事象や人物を、さまざまなメディアで紹介してこそ、大阪という街への観光資源の「本当に楽しめる」面白さをご紹介できることでしょう。むろん、リピータも増えるでしょう。
残念なことに、これらの「アンチ大阪風」内容の紹介は、決して公的な観光協会やお役所の観光振興会ではできないのです。関西在住の人々が、草の根的に情報開示し更新してゆき口コミを広げてゆよりほか、現在のところ伝達情報がないのです。
らもさんは在野のおいてその一端にたいへん貢献したかたであったと、私は思います。


2005/09/11 21:03 投稿者:詰めにくい
笑いドコロのガイダンスについては長所短所両方がありますね。ツッコミがうまく機能している漫才では,笑いにリズムが出ますし,会場が一度にドッ…ドッ…と沸くのは気持ちいいものです。ただ,客があまりにガイダンスに頼りすぎるようになると,そのうちにいくら陳腐なことを言ってもベルさえ鳴らしてやればヨダレを垂らすようになってしまいます。条件付けのない客が見ても何が面白いんだか全然わからないんですが、演者側もそれに依存してどんどん腐敗していく。吉本新喜劇のギャグやドリフターズなんてその最たるものですが,他にも結構あると思います。もう一つは、自然な流れの物語や会話の中に笑いどころを自分で探してくるという習慣がない観客のもとでは、シチュエーション・コメディのような形の笑いは育ちにくいであろうということです。日本の視聴者は「笑い声SEの入っていない奥様は魔女」で果たして笑うのかどうか、興味深いところです。

少し話がそれますが、アンチ大阪ということで一番面白かったのは「電波少年」ですね。あの番組が大阪にネットされるときに、「大阪は人情の町だ」ということで、松本明子が変装して大阪でいろいろな人に金を借りたり泊めてもらおうと頼み、次々に冷たく断られるところを延々映すという企画です。お下げ髪で牛乳瓶底メガネをかけてボソボソしゃべる松本明子の変装も見事でしたが、笑福亭鶴瓶だの赤井英和だのが人情の街大阪を歩く番組が、いかに「芸能人であること」に頼りきっているかを浮かび上がらせていて大笑いしました。らもさんは神戸で,大阪と一緒にされることを嫌っていた人ですし,電波少年も東京の番組なわけですが,こういう「大阪の(都合のいい)自画像」を壊すような笑いが,大阪から自虐的な笑いとして出てくれば面白いなと思っています。
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記事末に初出年月日を記載しています。初出の場合には無記載です。
Directed by Donald Mac

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