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ナンセンスは高級な笑い…なのか?本当に?(1)

(前話はこちら)
ところ変わって現代日本。
現役ナンセンス作家のメジャー処として別役実の名をあげるのに、異論は少ないかと思います。
クリックするとAmazonよりお求めいただけますこの第一線のナンセンス劇作家が、笑える寸劇の作り方を惜しみなく披露した本があります。『別役実のコント教室―不条理な笑いへのレッスン 』がそれ。お笑いテキストをかじり、これから少しスキルアップを目指したいかたには、たいへん示唆に富む好著です。ご関心の向きとお急ぎでない向きはぜひご通読を、さあお立ちあい。

喜劇作家志望者へコント(寸劇)創作のセミナーを開催、その内容を口述筆記した本書中、ナンセンス作家・別役実のイメージする“笑いの種類と段階”に触れた一節があります。
(笑いの種類には)まず言葉遊びがありますね。駄じゃれとか、同じ言葉を繰り返していってみせる笑い。一番初歩的なものですけれども、この言葉遊びの笑いというのは、井上(ひさし)さんなんかのコントにも、われわれのコントの中にも常に使われるんです。それは、ようするに大きな笑いの中にまぶすような形で、味つけのようにして使われる。言葉遊びによる笑いというのはばかにできない。

それから、即物的笑いというのがあります。舞台上で、すてんって転ぶとかぶつとかです。笑わせられないっていう役者が何人かいると、「おまえ、いいから転べ」っていいます。で、転べば客は笑うんです、大体。それから、ぶつ、叩くというのもある。関西のお笑いにも、ドツキ漫才とかありますね。ぶん殴るとか小突くとかいうことで笑いを取るということです。これも原初的な笑いなんですけども、いざという時に使える。これが即物的笑いです。

不条理ネタの大家にとり、駄洒落やずっこけは“原初的な”程度の低い笑いととらえられているようです―――あなどりがたい、と、しながらも。
ほとんどのお笑いネタは、ここでふるいにかけられてしまいましょう。なかなか手きびしい。
それから三番目に、形象。キャラクターによる笑い。変人とか得体の知れない人間が出てきて笑わせるというものです。おかしなやつが出てきて笑わす。これをキャラクターの笑いというんです。志村けん(1950~)の「変なおじさん」という定番コントがあります。あれは典型的なキャラクターの笑いというやつです。それからチャップリン(1889~1977)が紳士の格好をして、杖をついてよちよち歩きをする。あれも同じです。


志村けん「変なおじさん」(音を消したほうが楽しめるかも)


チャーリー・チャップリン(Charlie Chaplin)

四番目あたりから、ちょっと高級になってくる。関係の笑い。関係の笑いというのは、おかしい人間が出てくるわけじゃないし、極端におかしなことをするわけでもないくせに、笑えるというおかしさなんですね。これはかなり高級な笑いということになる。
たとえば、ケーキだと思っていたものが爆弾だったとかいうふうな、あるいは、爆弾をほとんどケーキだと思って取り扱っていましたというふうな情景。それが醸し出す笑いなどですね。そういうのを関係の笑いというんです。

で、われわれがつくり出す笑いの基本は、この関係の笑いというものをどうつくるかということだと考えてください。作家というのは、関係の笑いをどうつくるかということに苦労するんです。キャラクターの笑いというのは、演技者個人の才能によるところが非常に多いわけですね。それから、即物的な笑いについても、これはたとえばその場その場での演技の中で使われる場合が多い。言葉遊びに関しては、特に訓練する必要はないだろうという感じですね。だから、関係の笑いをどうつくるかということが一番重要なんです。

そう。
喜劇作家・別役実のなかでは、シットコムが高級な笑いなのです。ワタクシはこの論旨にやや首をかしげました。と同時にプロの喜劇作家の視点とはこういうものなのかと感じます。
別役氏のものさしでは、ザッカー兄弟よりもニール・サイモンのほうが高級だということになります。いずれもアメリカ小市民的笑いであって、ワタクシはそこに高級・低級の差異を区別できません。例が古くてすまぬ。

さて別役氏お家芸の不条理な笑いについては?というと、関係の笑い、つまりちょっと高級な笑いの一種と位置づけ、導いています。
そのほかに、これは僕の分類なんですけれども、不条理の笑いというのがある、というふうに考えています。この不条理の笑いというのはどういうことかというと、なかなか説明しづらいんですが、ほとんどおかしくはない、あるいはわっと笑えるような笑いではないというか。
   :
   :
 (中略)
   :
   :
これはフランスジョークなんですけれども、街角で男の人がナイフで胸を刺されて倒れているんですね。血がどろどろと流れて。で、通行人が来て、顔をのぞき込んで、「痛いかい?」って聞く。と、刺されたほうが、「痛いよ。笑うと余計痛い」っていう返事をするというのがあるんです。これもわーっと笑えないですけれども、それだけのケガをしている人間がどうして笑うんだよと、こういうおかしさみたいなものがある。
関係の笑いというのは爆笑を呼ぶこともできるけれども、不条理の笑いっていうのは笑えない。にもかかわらず、やはり笑いの一種として分類されるべきだろうという感じがあるんです。これだけの段階をいちおう念頭に置いておいてください。

ご高説はありがたく拝受するにしても、ワタクシ、じつはあまり別役実さんの作品を面白いと思えずにいるのです。(つづく)
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