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ナンセンスとデタラメの境界(1)

久しぶりにおフランスものなんぞをご紹介しつつ、ナンセンス(不条理)ネタの面白さとは何ぞや?などということを一席ぶってみます。
ナンセンス、いうと、ワタクシじつは英米系よりも大陸系(フランス・イタリア・スペイン)のほうが洗練されていると常々感じます。ただ残念なことに、ワタクシ、仏語は殆ど小学生レベル、イタリア・スペイン・ポルトガル・ドイツ語に至っては単語を拾い出すのが精一杯、全然聞き取れねーぞ、てめえ宇宙人みたいな言葉言ってんじゃねーよ!レベルでして。

以下にカミ(Cami)の“Une Maîtresse Femme”を私訳にてご紹介します。この文章を読んでいただいた後「どこが面白いのか、あんまりよく、わかんない」と感じられた向きは、それ以降の文章を読んでいただいても、あまりためにならないでしょう。お読み飛ばしくださいまし。



第一景 ペシミスティックな引越

         (場面はアパルトマン)
夫:うちの家具を全部ジグソーパズルみたいに小さなピースに切るってのは、我ながらいいアイデアだな。
  こうすりゃ、家賃の期日が近づきゃ、こっそり引越せるし。
  何度も何度も行ったり来たりで、夕べのうちに家具をほとんどは、次のアパルトマンに運べたし、な。
妻:門番、気がつかなかった?
夫:何にも。家具のピースひとつひとつは角砂糖よりも小さいんだ。ポケットにラクラク入る。
  門番のおばさん、ボクが出かけるのは見てたけれど、コートの中にベッドやテーブルを入れて運んでるなんて思わないだろ、普通。
妻:こんなの、まともな暮らしとは言えないと認めるべきだわ。
  あなたが怠け者なだけ。
  家具の引越でポケットを台なしにするよりも、家賃が払えるよう、ちゃんと働くことを考えたら?
夫:ああん?ボクが怠け者ぉ?馬鹿にすんなよ。
  考えてみろ。
  新しいアパルトマンに移るたび、2ヶ月半かけ、ジグソーパズル状態になってる家具を組み立て直しているんだ。
  それでも怠け者扱いか?家具を全部作り上げれば、すぐまた分解することを考えなきゃならない。
  それでも、怠け者かよ?
妻:ああ!もう!ベラベラ喋り立てないで!
  それより、仕事、してよ!
  まだ、鏡付きタンスのピースが17,625個、ナイトテーブルのピースが5,452個残ってんだから!
夫:おおっと、そうだな、こうしちゃおれん。
         (角砂糖はさみを使い洋服だんすのかけらをひとつずつとりはずして行く)
  よし、分解完了!
妻:じゃ、タンスは、この古新聞にわたしが包むんでおくわよ!
         (包みを作る前にかけらの数を調べる)
  17,625。数は合ってる。
  ナイトテーブルは、いつもみたいに、あなたのコートに入れてよ。
  じゃ出発しましょ。
夫:よし行こう。
         (ナイトテーブルをポケットにしまう時、入れそこなってかけらを2、3個落とす)
妻:ったく!不器用ね!拾いなさいよ!自分の11本の指の使い方がちっとも分かってないんだから!
夫:からかいたけりゃ、からかえ。生まれつき、指が1本多いのは、ボクのせいじゃない。
妻:うるさいわね、うぬぼれて!他の人より指が1本多いからって、他の人より怠けれるとでも思ってるの?
夫:でも
妻:(軽蔑して)お黙り!この、無能!
夫:(急に立ち上がり)無能ぉ?おとなしく聴いてりゃ、つけあがりやがって!
  もう、頭に来た!
         (と妻に飛びかかり、胡桃割で鼻を、砂糖ばさみで口をはさむ。)
         (妻は息が詰まり、倒れる)
夫:(落ち着きをとり戻し)あ。
  ‥‥うーむ。どんな時でも、怒り狂ってはいけないな。腹がたったとはいえ、えらいことをしちまったな‥‥あ、そうか。
         (夫は鋸を取り上げ、妻の体を細かく切る。それから、そのピースを全て新聞紙に包みこむ)
  さて、このあわれなカミさんのピースを、誰もいない通りのあちこちにばらまかなければならんな‥‥ま、いつもの運び出しかただし、な。
(出て行こうとして)おっと、おっと。いけね。タンスの包みを忘れてた。つまらんことであせってるぞ。あせるな、あせるな。
         (右手に妻のピースをしまいこんだ包みを持ち、左手にタンスのピース群――総数は17,625ピース在ること――の入った包みを持ち、コートの左右のポケットにはナイトテーブルのピースを詰めこんで、夫はアパルトマンを出る)

第二景 後悔
         (場面は、誰もいない通り。夜。)
夫:やれやれ。
  女房のピースを、城の瀬に投げこめたとはいえ、やっぱり、人殺しは、人殺しだよなあ‥‥気紛らしにだいぶ飲んだが、ちっとも酔っぱらった気になりゃしねえぞ‥‥ええい!もう1軒ハシゴしてやれ!‥‥もっと飲みゃ、なんとかなる……飲み続けるんだ‥‥
         (よろめきながら、居酒屋に入って行く。2分後、もっとひどいよろめき方で店から出てくる)
  さ。あの空地に、最後の女房のピースを捨てることにするか。
         (空地に、かけらの残りを捨てる)
  ふう、気の重い仕事は終わりだ。
  さ。わが新しいアパルトマンへ、帰ろう。“後悔が魂の中まで入りこみ、心を凍りつかせそうだ”ってヤツか、この気分は。ま、そらそうだよな。カミさん殺っちまったんだ‥‥結局、そのことに変わりはないんだしな‥‥。
         (その場を離れる。相変わらず、洋服タンスの17,625ピースの包みを手に提げている)
[つづく]
2005.06.26初出
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