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続・映画でウディ・アレンの面白さがわかるのか?(2)

(前話はこちら)
おれはハンター・カレッジ書店に入った。ぴりぴりと神経質そうな目つきの若い店員が近づいてきた。
「何かお探しですか?」
「『ぼく自身のための広告』の特製本を探してるんだがね。金箔で装丁した私家版。作者が友人のために数千部つくったという話があるんだ」
「調べてみましょう。ノーマン・メイラーの自宅に直通電話が通じていますから」
おれは店員をじっと見つめた。
「シェリーに教えてもらったんだがね」
「ああ。それなら奥へどうぞ」
店員がボタンを押した。書棚が横にすべって開いた。おれはフロッシーのかまびすしい快楽の館へ、従順な子羊のように入っていった。


赤いフロックの壁紙とヴィクトリア朝風の室内装飾が、部屋に気品を添えている。
髪を無造作にカットした黒縁メガネの青白い神経質そうな娘たちが、思い思いにソファーへ寝そべり、ペンギン・クラシック叢書をめまぐるしい早さでめくっている。笑顔のブロンド娘がおれにウインクし、二階の部屋へ目くばせをし「ウォーレス・スティーヴンスはどう?」と誘いをかける。彼女らがひさぐのはどうやら理知的快楽だけではない――叙情的なものも含まれるのだろう。
まもなく知ったのだが、50ドル出せば、客は“深い関係抜きに女性と親密に”なれる。
100ドルで、女が自慢のバルトークのレコードを貸し、夕食につきあってくれるうえ、彼女が不安の発作に襲われるのを見学できる。
150ドルで双子の娘とFMラジオが聞ける。
そして300ドルで快楽は頂点に達する。スレンダーなユダヤ系ブルネットが、近代美術館で流し目をくれ、誘いをかけてくれる。しかも彼女の修士論文を読む機会に恵まれ、“エレインのレストラン”でフロイトの女性観についての大喧嘩に客を巻きこみ、客の好みの自殺の芝居をしてくれるという。
一部の男にとり、こんなに申し分ないプレイはないだろう。うまい商売だ。すばらしい大都会、ニューヨーク。


「何がお望みですかな?」
 うしろで声がした。
 振り返ると、38口径が目と鼻の先につきつけられている。おれはたいていのことに動じないが、今度ばかりは心臓が宙返りをした。
 フロッシーだ。聞きおぼえのある声。だが彼女は男だったのだ。顔は仮面の下に隠れている。
「話しても信じないだろうが、わたしはカレッジの卒業証書すら持っていないんだよ。落第して放校処分にされたのでね」と、フロッシー。
「だから仮面をかぶっているのか?」
「『ニューヨーク・ブック・レビュー』誌を乗っ取る綿密な計画を立てたんだが、それにはライオネル・トリリングになりすます必要があった。わたしはメキシコへ行って整形手術を受けた。
 ファレスの医者で、トリリングの顔をつくるのが得意だというのがいる――金を積めばの話だがね。
 ところが、手術が失敗したらしい。包帯を取ってみたら、顔はオーデン、声はメアリ・マッカーシーそっくりになっていた。
 そのときから、わたしは法の裏側で生きるようになったのだ」
引金にかけたやつの指に力が入る直前、おれが間一髪動いた。体当たりをくらわせ、やつの顔を肘で一撃した。銃を奪った。レンガ壁が崩れ落ちるような音をたて、フロッシーは倒れこんだ。


 警察が駆けつけたとき、やつはまだすすり泣いていた。
「よくやった、カイザー」とホームズ警部。「うちの取調べが片付いたら、この男をFBIに引きわたす。
 ダンテの『地獄編』注釈本に、ギャンブラーが何人か絡んだ事件があるんだ。
 よし!こいつを連行しろ」

その晩おそく、おれはグロリアというなじみとデートをした。彼女はブロンド。大学を最優秀で卒業した経歴の持主。ただし違いがあって、彼女の専攻が体育学だったことだ。そこが気に入ってる。



先の『Mr. Big』よりもこちらは古い作品でちょっと薄味の感はありますが、「おかわり」は少なめのほうが美味しいというあたりでご容赦いただければ。
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