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映画でウディ・アレンの面白さがわかるのか?(1)

まず最初に申し上げておきたい。
ワタクシは基本的にウディ・アレンの映画を面白いと感じたことは、殆どありません。
むしろウジウジしたインテリぶりや説教臭さが鼻につき、不愉快な瞬間さえあります。

急いでここで補足しなければなりません。
脚本家・コメディスクリプターとしてのウディ・アレンは、ここ20年の中では一級品のお笑いセンスを持っていると思います。
端的に言えば、ウディ・アレンには脚本家として活躍してほしいのであって、ブツブツぼやくだけのヌーベルバーグの出来損ないみたいな映画づくりに時間を割いてほしくないのです。そんな映画はゴタールやベルトリッチに任せておけばよろしい。

彼がどれほど良いネタ書き手であるか。
なによりサンプルを1つ私訳でご案内しましょう。




おれは事務所に腰をすえ、38口径の垢をかきだしながら、つぎの事件はどこから舞いこんでくるやらなどと、のんびりと思っていた。
おれは探偵稼業が好きだ。
たまには自動車のジャッキで歯ぐきをマッサージされるような目にもあうこともある。だがグリーンの札束のあまい香りは、そんな苦労を吹きとばす。女はいうまでもない。おれにすれば、ごくあたりまえの生理現象で、息をするよりも多少気を使う、という程度の代物だ。

そんなわけで勢いよく開けられた事務所のドアから、ロングヘアのブロンド娘が駆け込んできて、名はヘザー・パトキス、職業はポルノ女優、実はお願いしたいことが、と話しだしたとたん、おれの唾液腺ギアはたちまちサードにあがった。ショート・スカートをはき、ぴっちりしたセーター。彼女の身体はハイなドラッグよりも心臓麻痺を起こし卒倒しかねない放物線の集合体だった。
「どういうことです?レディ?」
「ある人、というのかしら。さがしてほしいんです」
「失踪人?警察のほうには?」
「事情が事情なものですから、ルーポウィッツさん」
「カイザー、と呼んでかまわない。楽にして。オーケー。で、さがす相手というのは?」
「神なの」
「神?」
「そう、神なんです。万物の創造主、基本原理、第一原因、万有の存在。その《彼》をさがしてほしいの」
これまでにも事務所におツムの変なのが訪ねてきたことはある。だがこれほどグラマラスなら、話は別だ。
「なぜ?」
「それはこっちの問題でしょ、カイザー。あなたは見つけてくださればいいの」
「レディ。おあいにく。相談相手をまちがえたな」
「でも、なぜ?」
「洗いざらい話してもらう主義でね」おれはそう言って立ちあがった。
「わかったわ」
彼女は下唇をかみ、ストッキングのシームをのばした。軽い挑発のつもりなのだろうが、いまのところは乗る気もない。
「さて。ぶちまけていただきましょうか」
「そうね。ほんとをいうと―――あたし、ポルノ女優じゃないの」
「じゃない?」
「ええ。名前もヘザー・パトキスじゃないわ。クレア・ローゼンスワイグが本名。ヴァッサ-の学生なの。専攻は哲学。西欧思想史とかそういったものね。この1月に論文を提出しなければいけないの。西欧宗教論の。ゼミのほかの女の子たちは、みんな思弁的な論文を出すらしいんだけれど、あたしは“知りたい”わけ。グルパニェ先生の話では、そのあたりが証明できれば、選考はパスなんですって。それに成績が全Aなら、パパがベンツを買ってくれる」
おれはラッキー・ストライクとガムの封を切り、1本と1枚を口にくわえた。話に興味を持ち始めると、いつもそうなる。甘やかされた女子大生。並みはずれたIQ。じっくりつきあってみたい体。
「で、《彼》の顔つきや特徴は?」
「わかるわけないでしょ、見たこともないのに」
「じゃ、なぜ存在するとわかるんです?」
「それをあなたが調べるんじゃない」
「なるほど、すばらしい。顔つき、特徴はわからんというわけだ。どこから手をつけるかもわからないわけ?」
「まあ、そういうことね。
 ただ、どこにでもいるんじゃないのかしら。この大気の中、ひとつひとつの花の中、あなたやあたしの中――この椅子にも」
「ふむ」
とすると、この女は汎神論者か。
おれはそいつを頭に叩き込み、とにかくやってみようと答えた。
報酬は1日100ドル、プラス経費、プラス夕食につきあうこと。
彼女はにっこり笑い、オーケイした。
おれたちはいっしょにエレベーターで降りた。外はだいぶ暗くなってきた。神は存在するのか存在しないのか、どちらにせよこの都会には、おれに真相を探ってもらいたくない連中がうようよいる。


この街のユダヤ教徒の元締め、ラビ・イッハク・ワイズマンのところへ、おれは最初にアタリをつけた。むかし彼の帽子に豚脂がこすりつけられるトラブルがあった時、犯人を見つけてやって以来、懇意にしている。
話し出した途端、妙だ――おれは気づいた。ラビがおびえている。心底おびえていた。「むろん、そのだれかさんというのはおるよ。だが、わしがその名前をいえるもんか。殺されては元も子もないからな。もっとも名前をいわれるぐらいで、なぜやっこさんがそこまでピリピリしなきやいけないのか、そのあたりはさっばり解せんね」
「《彼》と会ったことは?」
「わしが?冗談をいわんでくれ。孫の顔を見られるまで長生きできて、わしは幸運だったと思っとるよ」
「じゃ、なぜだれかさんが存在するとわかる?」
「どうしてわかるか?どういう意味だね、それは?このお空の上にだれかさんがいなかったら、いま着てるこんな服が14ドルで買えるものかな?ほら、このギャバジンだ――信じられん者は罰あたりだ」
「もっとマシな証拠はないのか」
「おいおい!――じゃ、旧約聖書はなんだ?あれはチョップト・レバーと同じ食い物の一種か?モーセがどうやってヘブライ人をエジプトから脱出させられたと思う?ニコニコ顔とタップダンスか?
ウソはいわん。そこらの変ちょこな機械を持ちだしたって、紅海をまっぷたつに裂くことはできやせん。これは並みの力じゃないぞ」
「相当なタフガイということか?」
「そうだ。タフなことは覚悟しといたほうがいい。あれだけ手際よくこなすんだ。ま、昔よりは結構甘っちょろくはなってるかもしれん」
「なぜそんなに詳しい?」
「われわれが選ばれた民だからさ。かわいい子らを守ってくださるというわけだ。この問題については、いつか、そのだれかさんとじっくり膝つきあわせて話してみたいと思っとるがね」
「選ばれたその見返りはどういう形で払ってる?」
「聞くまでもなかろう」
なるほど、そういう仕掛けか。ユダヤ人と神との腐れ縁はかなりのもののようだ。マフィアがよく使うやり口だ。庇護を与えるかわりに、それだけの礼はいただくという寸法。ラビ・ワイズマンの口ぶりだと、神は相当に吸いあげてやがる。
[つづく]
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