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ネタが書ければどこへでも(2)

(前話はこちら)■正しくピアノ・リサイタルを聴くにはピアノやヴァイオリンのリサイタルでも先の作法をおすすめします。が、もうひとこと。「ええ、たしかに彼女はテクニックがあるわ。 でも、それは自動ピアノにもいえることじゃない?」などという感想をつけ足すとなおよろしい。そして、“ソウル(魂)”という言葉を――飲み込みの悪いウエイトレスに何度も注文をクドクド繰り返すように、深い感情をこめ――あちこちへ効果的に差...

ネタが書ければどこへでも(1)

ドナルド・オグデン・ステュアート(Donald Ogden Stewart)といえば、まずはなんといっても『フィラデルフィア物語』。ヘイズ・コード縛りのハリウッドのさなか、小洒落たラブコメを書いたスクリプターとしてその名を残し、その作品がスクリューボール好事家(たいへん少数派だとは思いますが)間では、定番中の定番コメディ映画であるのは、ご承知のとおり。ところで。ドナルド・オグデン・ステュアートが当初お笑い物書きとしてデ...

笑わせる文章のいらなくなった時代に

昔『いたずらの天才』の翻訳本が割合長く売れたことがあった。いわゆるプラクティカル・ジョーク集の類の本だ。たぶんもう30年は経たのではないかと思うが、いまだ『いたずらの天才』ほど傑作なジョーク本には、とんとお目にかからない。おそらく冗談の通じない連中がハバを利かす世となったか、ジョークなしでも毎日が楽しく過ごせるおめでたい人が増えたのだ。どちらの世に変わったにせよ、私のようなタイプの人間には住みにくい...

すべてのお笑い文はバックウォルドとネタかぶり(3)

(前話はこちら)わたしは最近のコラムで潜在意識に呼びかける声のことを書いた。今回は呼びかける声について書く。今やわれわれは録音ガイダンスの時代に入りつつある。先日所用でアトランタに飛ぶまでは、どれほど広く行きわたっているかに気づかなかった。飛行機からおりたあと、延々と歩かされ長いエスカレーターで地底に降ろされ2両連結の列車を待たされ数度停車したあとでたどりついたもうひとつの長いエスカレーターで地上...

すべてのお笑い文はバックウォルドとネタかぶり(2)

(前話はこちら)新聞報道によれば、サブリミナル・メッセージは今や小売店で流される音楽にまで及び、購買促進に一役買っているという。得意先の依頼で数社が制作する音楽には、客の脳に働きかけ大して買う気もない品物まで知らず知らずのうちに買うよう仕向けるメッセージが隠されている。わたしは地元のあるショッピング・センターへ行くまで、この情報に関し懐疑的だった。売場に流れる音楽は、客の休日気分を煽るクリスマス・...

すべてのお笑い文はバックウォルドとネタかぶり(1)

かかってくるのはたいてい夜の10時か11時ごろ、たぶんそのときあなたは寝ているかテレビを見ているか入浴中。電話が鳴りだし、いつまでもいつまでも鳴りつづける。子供たちが外出していることを思いだし、あなたはあわてて電話に出る。「もしもし、もしもぉぉぉし!」あなたは受話器に向かって叫ぶ。するとこの声(たいていは男の声だが、女のこともある)が聞こえる。「こちらはブランク家具店でございます。家具の張替え、居間の...

ドナルド・バーセルミって お笑い物書きだよね

どういうワケだかわがニッポンにおいては「気鋭の芸術家・文学者」として輸入・定着したドナルド・バーセルミ(Donald Barthelme)ですが、なんでそうなっちゃったんだろ。これって『名探偵コナン』を、成人社会を子供の目線で風刺した作品、て輸出紹介するぐらい誤認度があるんでないかい?ドナルド・バーセルミはユーモリストだと、ワタクシは思うのです。ドナルドの得意分野が現代美術なため文中テクニカル・タームに美術芸術用語...

ビリー・ワイルダーは京都・丸善に爆弾を仕掛けるか

『 トッツィー』を観たあとに、こう思った。「あ。ダスティン・ホフマン(あるいはシドニー・ポラック監督)は、『お熱いのがお好き』を観てるな。」『ミセス・ダウト』を観たあとに、こう思った。「ああ‥‥。ロビン・ウイリアムス(あるいはクリス・コロンバス監督)は、『トッツィー』は観ているが、『お熱いのがお好き』は観ていないな‥‥」歳をとるにつけ困るのは、昔の映画の似たようなシット・コムをすぐ思い出し、比べてしま...

ラフティカル・ミステリー・ツアー

推理小説が苦手なんでございます。15~16ページほどの短編ならば、まだ何とか頑張って辛抱強く読み続けるのですが、20ページを越える中編以上となるともうダメ。犯人が知りたくてしょうがない。で、どうするかというと。最終章の末文2、3節だけ先に読んじゃう。つまり犯人を先に知っておく。それさえわかっていれば、主人公のどんな大冒険も矛盾に満ちた推理もミスリーディングも寛容で慈悲に満ちた心で許す良き読者と化す。恐るべ...

グラウチョとレオと一休禅師(2)

(前話はこちら)この男とポクシングの観戦にいくのもヒヤヒヤものだ。事情通にはよく知られているとおり、マルクス兄弟はどういう思いつきだか、あるヘビー級選手と契約を突然ある日かわし、その選手をキャンバスバック・コーエンと名づけ、必ずリングの床を背にすることを運命づけた。専門家の意見に拠ると、このボクサーの栄光は不吉なパートナーシップ契約以来、いまなお回復していないらしい。グラウチョがこのおかかえ選手に与...

グラウチョとレオと一休禅師(1)

米語には日本語の「頓智」にあたるニュアンスの言葉がありません。たぶん。少なくとも一般口語としてはあまり使わない――1980年代のニューヨーク・マンハッタン島内アメリカン・アベニュー周辺では使っていなかったことだけは約束できる。だから妙意即答に気の利く返事ができる才能のある人物が登場すると、いやに大仰な表現が並ぶことになります。我が愛するニッポンにあっては「中世」といわれる時代をキチンと持っていて、今の世...

James Thurberのスポークスマンにあらず

またもやハウツーものネタをご紹介します。どうせご紹介するのならば、せっかく時間をいただき読んでいただいている皆様へサービスすべきであろう、そう、このページを読み終わった途端に即役立ちつい一度は試してみたくなるような実用情報を提供すべきではないか‥‥そう思い立ち、芝刈機の操作法をご案内します。あなたの愛家に芝生があろうがなかろうが、それは関知するところではありません。御愛用者各位(~うちの芝刈機の“本...

お笑い文豪ビギナー体験講座へ ようこそ

以前どこかに、お笑いテキストの笑える賞味期限は最長でも100年ていどだと書いたことがあります。100年以上経てしまうと、言葉遣いが変わってしまうため、その時代の瞬間を固定化する「書き言葉」にあっては、面白味が通じなくなってしまうのです。落語などが100年以上前の話芸を維持できているのは口承伝承ゆえの強みであって、演者が時代に応じクスグリを入れ替えときには話そのものも変形させたからこそ、今日でも笑うに耐えた...

米国お笑いの名門「おすわり家」

「戦争ごっこ大好き!」の現米国大統領・薮氏は、そのお父さんもかつて副大統領や大統領を勤めたのをご記憶でしょうか?つまり薮家はいわゆる政治的「名門家」のひとつなわけです。そう思えば、バカ息子があちこちで愚策を施そうと「ま、しょーがあんめぇ。2代目っつーのは坊ちゃん育ちでマヌケなモンだかんな。」とあきらめ顔のアメリカ百姓の顔も浮かぶというものです。どの職業・カテゴリでも名門と称してよい家系、というのが...

ドロシー婆さんのウィット

ジャズ・エイジ世代のひとりに、ドロシー・パーカー(Dorothy Parker)という才女がいました。詩や古い映画のシナリオなども書いたそうなので、名前をご存知の向きもおありでしょう。とはいえ、生きていれば我が愛するマイクおじさん、それに前にちょっとだけ紹介したラッセル・ベイカーやA・バックウォルドの“母親”と同世代。いうなれば我々からみれば「おばあちゃんの若かった頃のテキスト」なのですが、これがなかなかどうして機...

「マイクス」なんて読ませない(2)

[前話はこちら]イギリスに帰化するならば“to naturalize”という動詞は、イギリス人があなたことをどう思っているかのはっきりした証しです。イギリス市民権が許されるまでは、あなたは未開人とさえ見なされているのです。私はポケット・オクスフォード辞典で調べ、251ページでnatural(na' tural)という単語を見つけました。そこではこのように説明されてます……of or according to or provided by nature, physically existing, inn...

「マイクス」なんて読ませない(1)

どの国でも自国がどんな風に他国の目に映っているのかは、多少なりと関心がおありなようで。それは、いうなれば“小市民の自意識”に他なりません。愛しき愛しきわがニッポンにおいても例外ではございませなんだようで、昔からそのテの刊行物やら音楽には事欠きません。『菊と刀』は来日することなくあそこまで調べあげたのだからスゴいだの、『不思議の国ニッポン』シリーズがいつの間にやらなんだかえらく何巻も刊行されただの、な...

マイクおじさんのクリスマス

毎年、年の瀬も迫り街中がクリスマス・デコレーションで彩られる頃になると、決まって思い出すマイクおじさんの話が幾つかあります。マイクおじさんはクリスマス・シーズンの頃になると決まってとびきりサエた文章を書いていて、それらは日本版のみの編集で『ロイコのクリスマス』という冊子として刊行されたこともあります。今回はクリスマス前になると慌てて慈善事業に努めはじめる小市民のスケッチを、ひとつ紹介します。ミシガ...

ウディ・アレンの誉めかた

ウディ・アレン(Woody Allen)ほど誉められるコメディアンは、そういない。いわく「毎年アカデミーやオスカーにノミネートされながら、一度も出席したことがない」一度も出席していないという点では、ワタクシとて満たしております。ワタクシなんぞ、ノミネートすらされたこともない分、よりレコードとしては偉大じゃないか。いわく「都会人の神経質な心理をシャレた表現で映しだしている」そんなものが観たいのならば、街なかの...

マイク・ロイコも もういない

マイク・ロイコが亡くなり、もう何年が過ぎたでしょう。…7年です。知っていながら書き出し用に“問いかけ体”風にしてみました。はじめから時代遅れの年寄りの語り口で、淡々と笑わせてくれたマイクおじさん。わたしはあなたのように年をとりたかった。もう実現できないほど人生の残り時間は使ってしまいましたが。マイク・ロイコ(Mike Royko)はアメリカでは(特にシカゴでは!)有名な新聞コラムニストですが、日本では一部のコ...

続・映画でウディ・アレンの面白さがわかるのか?(2)

(前話はこちら)おれはハンター・カレッジ書店に入った。ぴりぴりと神経質そうな目つきの若い店員が近づいてきた。「何かお探しですか?」「『ぼく自身のための広告』の特製本を探してるんだがね。金箔で装丁した私家版。作者が友人のために数千部つくったという話があるんだ」「調べてみましょう。ノーマン・メイラーの自宅に直通電話が通じていますから」おれは店員をじっと見つめた。「シェリーに教えてもらったんだがね」「ああ...

続・映画でウディ・アレンの面白さがわかるのか?(1)

3年ほど前にウディ・アレンの『Mr.Big』の私訳を公開したとき、思いのほか多くのコメントをいただきました。またその後も割によくアクセスがあったようです。個人の趣味で公開しているサイトとしては、まあ好評だったと言ってよい結果でした。当時の文末に「好評だったら、もうひとつストックがあるので公開します」と記しました。あれから3年。お約束どおり、もうひとつの私訳ストックを公開します――いや精確を規すると、3年前...

映画でウディ・アレンの面白さがわかるのか?(3)

(前話はこちら)彼女はすけすけのネグリジェを着て、おれを迎えた。その顔はものおもわし気ですらある。「神が死んだわ。警察がここにきたのよ。あなたをさがしている。実存主義者の犯行だと思ってるみたい」「いや。犯人はきみだ」「なんですって?冗談はよして、カイザー」「きみが神を殺したんだ」「なにをいってるの?」「きみだよ、ベイビー。ヘザー・パトキスでもない、クレア・ローゼンスワイグでもない。そうだろ?エレン・...

映画でウディ・アレンの面白さがわかるのか?(2)

(前話はこちら)おれはタクシーをひろい、10番街のダニーのビリヤード・ホールへとばした。支配人は、虫の好かない下卑た小男だ。「シカゴ・フィルはいるか?」「だれだ?てめえ」おれはやつの胸ぐらを、下にある皮といっしょにつかんだ。「ああん?なんだと?」とたんにやつの態度は変わり「お、奥にいる‥‥」と答えた。シカゴ・フィル。小切手偽造の名手、銀行強盗、ヤクザ、そしてなにより自他ともに公言はばからない無神論者だ。...

映画でウディ・アレンの面白さがわかるのか?(1)

まず最初に申し上げておきたい。ワタクシは基本的にウディ・アレンの映画を面白いと感じたことは、殆どありません。むしろウジウジしたインテリぶりや説教臭さが鼻につき、不愉快な瞬間さえあります。急いでここで補足しなければなりません。脚本家・コメディスクリプターとしてのウディ・アレンは、ここ20年の中では一級品のお笑いセンスを持っていると思います。端的に言えば、ウディ・アレンには脚本家として活躍してほしいので...

ナンセンスとデタラメの境界(2)

(前話はこちら) 第三景 やさしい伴侶      (場面は新しいアパルトマン) 夫:(入って来る)やっと新しいアパルトマンに着けたな。  もうすぐ夜が明けるな。家具の組み立てを始められる。  この包みのタンスを組み立てなきゃ。      (ピースを、ひとつずつ、はめこみ始める)   う~ん‥‥手が震えるし、目がかすむなあ。飲みすぎだな、こりゃ……飲みすぎだ……飲みすぎだ……      (はめこみを続ける) ...

ナンセンスとデタラメの境界(1)

久しぶりにおフランスものなんぞをご紹介しつつ、ナンセンス(不条理)ネタの面白さとは何ぞや?などということを一席ぶってみます。 ナンセンス、いうと、ワタクシじつは英米系よりも大陸系(フランス・イタリア・スペイン)のほうが洗練されていると常々感じます。ただ残念なことに、ワタクシ、仏語は殆ど小学生レベル、イタリア・スペイン・ポルトガル・ドイツ語に至っては単語を拾い出すのが精一杯、全然聞き取れねーぞ、てめ...

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このサイトは、かつて「Lankin' A Go! Go!」というサイト名で別URLにて公開していたネタや記事を多く改稿・転載しています。


記事末に初出年月日を記載しています。初出の場合には無記載です。
Directed by Donald Mac
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